「マイホームを買おう!」と決めた時、住宅ローンについて調べ始めたタイミングで必ず耳にするのが「フラット35」です。
でも、初めてお家を購入する方にとって、「住宅ローン」のことは知らないことだらけですよね。
銀行の住宅ローンは、「銀行名」が入ってるので「なんとなく銀行が融資してくれるんだ」と理解できますが、「フラット35」については、「そもそも何?」っていう方が多いのではないでしょうか?
(実際に私が不動産営業マン時代は、ほとんどのお客さんに「フラット35ってなんですか?」と質問されました。笑)
「フラット35」は住宅ローンの一種なんですが銀行の住宅ローンとは異なります。
住宅ローンを選んでいく際に、「フラット35」の審査基準、金利、メリットやデメリットなど詳しい内容を知っておかないと、他の住宅ローンと公平に比較検討することができません。
住宅ローンは長期的な返済の必要が出てくるので、あらゆる角度から徹底的にチェックを行い、審査基準や金利面、取り扱いの金融機関なども把握しておきましょう。
それでは、今回の記事は「フラット35」について詳しく、そしてわかりやすく解説いたします。そして、それだけでなく一般的な銀行が用意する住宅ローンとの違いや比較なども行っていますので、必ずご覧下さい。
●「フラット35」は銀行の住宅ローンとは異なり、「住宅金融支援機構」が債権を買い取っている=(国がリスクを背負ってくれている)
●審査自体は緩いものの、返済負担率や住宅基準の合致状況などが確認される=(フリーランスや自営業、個人事業主、会社役員、正社員以外の雇用形態などでも借り入れが可能)
●「フラット35」の金利は、全期間固定金利のみ。そして返済期間によって差があり、20年以下の場合は1.220%~1.910%、21年~35年の場合には1.270%~年1.960%となる
●日本全国の大小問わず様々な金融機関が「フラット35」の取り扱いをしている=(「住宅金融支援機構」と「銀行」のコラボ商品と思っていただいてOK)
それでは以下で詳しく見ていきましょう。
この記事の目次
1,「フラット35」とは?
最初に、「フラット35とは?」の要点を解説しておきたいと思います。
住宅ローンによる借入れを検討している場合、「フラット35」も比較対象になることが多いと思います。
「フラット35」とは?
「フラット35」は、「住宅金融支援機構」と「銀行」が提携して提供されている住宅ローンのことです。いわば、「「住宅金融支援機構」と「銀行」のコラボ商品と思っておいて下さい。
「住宅金融支援機構」とは、独立行政法人住宅金融支援機構という正式名称で、所管省庁が国土交通省住宅局と財務省の独立行政法人です。
(ちょっと小難しいですよね・・。この辺りの意味は覚えておかなくても大丈夫です、国が管轄している法人なのかーくらいで思っておいていただければ大丈夫です。)
「住宅金融支援機構」については、公式ホームページもありますので、詳しくは以下も参考にご覧下さい。
「フラット35」は、一般的な銀行が提供している住宅ローンとは少し異なっており、銀行が融資したローン債権を「住宅金融支援機構」が買い取る形を採用したものです。=「住宅金融支援機構」が債権を買い取ることで銀行が融資する資金を確保することができます。
簡単に説明すると、「住宅金融支援機構」が銀行のリスクを背負っている仕組みです。
後に説明しますが、「フラット35」の特徴のひとつとして金利が全期間固定金利があります。
全期間固定金利は、融資する銀行側からすると、資金もそれなりに必要となりリスクも高いです。
そのため、「住宅金融支援機構」が債権を買い取ることで、融資する銀行のリスクを背負っているという仕組みなんです。
(ちなみに、「買い取った債権はどうなってるの?」については、住宅ローン選びに必要な情報でないため、割愛いたしますね。)
このような仕組みによって、最長35年の全期間固定金利サービスを実現していて、融資される際に決められた金利が返済まで変化することがないので毎月の返済が行いやすいという利点があります。
このあたりの仕組みのお話は覚えなくてOKですので、ここでは、「フラット35」は全期間固定金利であることを把握しておきましょう。
また、一般的な「フラット35」の他にも、
- 「フラット35」S
- 「フラット35」リノベ
- 「フラット35」子育て支援型
- 「フラット35」地域活性型
というタイプも設けられています。
あらゆるニーズに対応していて、たとえ「団体信用生命保険」の加入が難しい場合にも借入れが行えます。
▶参考情報:「団体信用生命保険」について詳しくは以下の記事をご覧下さい。
住宅購入を検討している人は本当に多種多様な境遇にあるケースが多く、多くの場合借入れが困難なケースも出てきます。
「フラット35」は、銀行の住宅ローンと違い審査基準も異なり(「フラット35」の詳しい審査基準は、この記事の後の段落でご紹介しています)、個人に関する審査は銀行の住宅ローンに比べるとハードルが低いため、銀行の住宅ローンの審査に落ちた人でも、あきらめず「フラット35」の活用も検討できることを覚えておきましょう。
▶参考情報:銀行の住宅ローンの審査に落ちた時の原因はいろいろです。以下を参考にご覧ください。
2,「フラット35」と「銀行の住宅ローン」を比較する
次に、「フラット35」と「銀行の住宅ローン」の違いを簡単にわかりやすく比較しておきます。
よく耳にする「フラット35」と一般的な金融機関が提供する「銀行の住宅ローン」は、以下の通りです。
(1)審査基準
●「フラット35」 : 購入物件の審査基準(定められた物件の技術基準など)に重点を置くなど独自の審査基準がある
●「銀行の住宅ローン」 : 個人信用情報、年収や安定した収入、雇用形態など細かい審査基準がある
最初に気になる「審査基準」の違いですが、「フラット35」と「銀行の住宅ローン」では大きく異なります。
やはり、「銀行の住宅ローン」は個人信用情報はもちろん、年収や安定した収入、雇用形態など、様々な審査基準がありそれなりに厳しい面も多いです。
▶参考情報:銀行の住宅ローンの審査基準については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧下さい。
それに比べて「フラット35」は、個人に関しては一定の審査基準(年収など)がクリアしていればOKで、どちらかというと「購入物件」に関わる審査基準をメインに見られます。(購入する物件が定められた技術基準に適合しているかどうかなど・・)
(2)借入額
●「フラット35」 : 物件価格の9割が前提
●「銀行の住宅ローン」 : 物件価格や諸費用など含めて全額(※1)
(※1:但し、個人の審査内容により借入可能額は変動しますので、誰もが「物件価格や諸費用など含めた全額」を借入できるわけではありません。)
上記のとおり、「フラット35」は、物件価格の9割が前提になるので、頭金が準備できない方には厳しい条件かもしれません。
(3)金利のタイプ
●「フラット35」 : 全期間固定金利
●「銀行の住宅ローン」 : 変動金利や固定金利
単純に金利面だけを見ると「フラット35」よりも「銀行の住宅ローン」の方が低いケースも目立ち、実際にそれを活用する人も多くなっています。
ただ住宅ローンによる借入れの際には金利だけに注目するのではなく、その他の手数料や保証料、団体信用生命保険の料金などの支払いも生じます。
(4)住宅ローン保証料
●「フラット35」 : なし
●「銀行の住宅ローン」 : 都市銀行をはじめ銀行や2%程度の保証料が多い。(なしのケースもあり)
保証料については、フラット35は必要がなく、都市銀行をはじめとした銀行は2%程度の保証料が請求されるケースが大半です。
(5)団体信用生命保険
●「フラット35」 : 加入は任意
●「銀行の住宅ローン」 : 加入は必須
など、「フラット35」と「銀行の住宅ローン」では、様々な違いが見て取れます。
整理しますと、審査の通りやすさの面では、基準の緩さのおかげで「フラット35」の方が借りやすくなります。
勤続年数に関する規定が設けられておらず、さらに返済負担率さえクリアしていれば年収額が審査に及ぼす可能性は基本的にはありません。
但し、借入額や金利のタイプなど、その他の項目を比較するとメリット・デメリットはやはり出てきます。このあたりは、後の段落で詳しくご紹介いたしますので、そちらをご覧下さい。
3,気になる「フラット35」の審査内容について
それでは、「フラット35」の審査内容についてご説明していきます。
「フラット35」の審査内容の特徴は、下記の通りです。
ここだけチェック!「フラット35」審査条件の一覧
- 最低限の申し込み要件を満たしているかどうか(年齢や国籍、永住許可など)
- 返済負担率の割合
- 定められている住宅基準に合致しているか
以上が特にチェックされやすい審査内容であり、下記がその詳細です。
まず「日本国籍を有している人、もしくは特別永住者や永住許可を有している人かどうか」の確認が行われます。
そして多くの人が気になっているのが返済負担率で、これは年収が「400万円以上か、未満か」で基準が異なります。
●年収400万円以上の場合
返済負担率が35%以下であることが求められます。
●年収400万円未満の場合
30%以下が審査基準になるでしょう。
そして、「購入する住宅や建築する住宅が住宅金融支援機構が決めている基準に合致しているか」も確認されます。
一戸建て住宅とマンションの場合で求められる床面積が違うものの、この面積が重視されることは事実です。
それ以外にも購入費用や建築費用が審査における条件となります。
4,金利はどんな感じ?
次に、「フラット35」の金利も気になるますよね、どんな感じか見ておきましょう。
住宅ローンを利用して借入を行う際には毎月の返済のことを自然と考えてしまいます。
返済金額に大きな影響を与えるのが金利ですが、「フラット35」の金利は、2019年3月時点で下記の通りです。
2019年3月時点の金利
●返済期間が20年以下:1.220%~1.910%(年)
※1.220%であるケースが多い
●返済期間が21年~35年:1.270%~年1.960%(年)
※1.270%であるケースが多い
▶参考:以下の「フラット35」の公式ページでは、リアルタイムの金利情報をご覧いただけます。
https://www.flat35.com/loan/flat35/
ただ、「フラット35」Sの場合には、金利プランによって、当初5年間 or 10年間は、基準となる「フラット35」の金利から0.25%(年)引き下げられます。
「フラット35」の金利は、一般金融機関が提供している「銀行の住宅ローン」サービスに比べて低いこともあれば高いケースも見られます。
自らが理想とする返済計画に基づいて最もお得であろう方法を探し出すことが重要です。
5,「フラット35」を活用するメリットとデメリット
次に、「フラット35」のメリット・デメリットもわかりやすく説明しておきます。
一般的な住宅ローンとは一線を画した「フラット35」は、一番の特徴でもある固定金利の安心感を得られる嬉しい制度です。
メリットもたくさんあるものの、逆にデメリットもあるため、双方の特徴をチェックした上で申し込みを行ってください。
(1)メリット
●全期間固定金利型なので返済計画を立てやすい
状況によって金利が変わる住宅ローンも少なくありませんが、「フラット35」はそうではないので中長期的な返済計画を立てやすいです。
●保証料が必要ない
住宅ローンの利用の際には少しでも必要金額を抑えたいものですが、「フラット35」は保証料が必要なく、なおかつ保証人も求められません。
●審査基準が緩い
一般的な「銀行の住宅ローン」と比べると借入れに対する基準が緩くなっていて、本来借りづらい個人事業主なども安心です。
●団体信用生命保険に必ず入る必要がない
加入できなければ借入れができないというわけではないので、加入が難しい人でも安心です。
(2)デメリット
●適用除外物件がある(物件の審査基準が重要視されている)
住宅の金額や技術的な基準を満たしているか、規定以上の床面積があるかがチェックされます。
●固定金利なので金利的に損を被る可能性もある
社会の状況に応じて変動する金利の場合は、将来的に「フラット35」よりもかなりお得な金利になることも想定されます。
以上のようなメリットとデメリットがありますが、トータル的に考えると「フラット35」の魅力はやはり絶大です。
デメリットがあることも事実なので、自らの将来設計次第では望ましくありませんが、住宅ローン利用を考えている人はとりあえずメリットとデメリットを把握しておきましょう。
メリットやデメリットを把握した上でも、どうしても選びきれない人は、住宅ローンに強い専門家(ファイナンシャルプランナー等)に相談して、シミュレーションをしてもらいアドバイスをしてもらうことをおすすめします。
6,「フラット35」がおすすめの人はどんな人?
前段のメリットとデメリットをふまえた上で、住宅ローンの「フラット35」の活用がおすすめの人は一体どのような人たちなのか?という点を取り上げてみます。
具体的には下記の通りです。
「フラット35」の活用がおすすめな人はこんな人です。
- 団体信用生命保険の加入が難しい人
- 自分なりのライフプランを作って長期的に生活したい人
- 不安定な職に就いている人(個人事業主、会社役員など)
- 審査基準が緩い住宅ローンサービスを利用したい人
以上の人たちが「フラット35」がおすすめになってきます。
住宅ローンは大金を借り入れする制度のため、貸す側の金融機関も様々な審査を行っています。
「フラット35」は審査が緩いと言われることも少なくないので、不安を感じている人にも比較的おすすめです。
しかし闇雲に借りるのではなく、返済し続ける必要性があるのできちんと事前計画を立てましょう。
「フラット35」は固定金利制度なのでライフプランも立てやすいので計画立案も容易です。
7,「フラット35」を取り扱いを行っている金融機関情報
最後に、「フラット35」の住宅ローンサービスを取り扱っている金融機関をご紹介しておきます。
「フラット35」の住宅ローンサービスを取り扱っている金融機関は、全国に300以上存在しています。
大手都市銀行や信託銀行、有名ネットバンクをはじめ、各地方に根差した地方銀行や信用金庫でも取り扱いがあります。
その他にも信用組合や労働金庫、信農連のような機関での取り扱いもある点が特徴です。
特に、一般的によく知られている有名な取り扱い金融機関は以下の通りです。
「フラット35」の住宅ローンを取り扱っている有名金融機関一覧
上記に加えて、「フラット35」では、
が有名です。
「300」を超える金融機関が対応しているものの、新規借入れではなく借り換えにも対応している金融機関は少々減ってしまい「300弱」になります。
「フラット20」もほぼ同様の金融機関数ですが、「フラット50」に関してはかなり対応している金融機関数が減ってしまいます。
「フラット35」はみずほ銀行をはじめとする都市銀行だけでなく近隣に多数存在している地方銀行や信用金庫などでも手続きが可能なため、申し込みの際に不都合を感じにくいです。
8,まとめ
「フラット35」は、「住宅金融支援機構」が民間の金融機関からローンの債権を買い取る形式を採用しています。
「フラット35S」をはじめとする関連サービスも用意されていて、なおかつ全期間固定金利ということで多くの人に安心感を与えています。
審査はそれほど厳しくはないものの最低限の申し込み要件や返済負担率の割合、定めている住宅基準に合致しているかがチェックされます。
メリットやデメリットもそれぞれいくつかありますので、自らの人生設計に照らし合わせた上で、活用するかどうか検討してください。
多種多様な金融機関での取り扱いもあるので申し込みも行いやすく、「フラット35」は今も人気のある住宅ローンサービスのひとつです。
記事更新日:2020年01月20日
記事作成者:希野 通貴