家を買うことは一生に何度もあるものではありません。
そのため、住宅ローン控除制度についてよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
ですが、最大限に利用すると大きな控除を受けられるので、利用方法を知っておきたい制度です。
この記事では、住宅ローン控除をスムーズに受けるために必要な条件や、計算方法についてシミュレーションを交えてご紹介します。
●現在は住宅ローン控除が13年間に拡充されている
●住宅ローン控除は40万円が限度
●住宅ローン控除が所得税から控除しきれない場合は翌年の住民税が安くなる
●会社員の場合、2年目以降は住宅ローン控除を年末調整で申請する
それでは以下で詳しく見ていきましょう。
この記事の目次
1,【最新版】住宅ローン控除(減税)の制度を解説
住宅ローン控除とは、正式名称を「住宅借入金等特別控除」と言い、個人が住宅ローンを組んでマイホームを新築・購入・増築した際に受けられる所得税の税額控除のことです。
住宅ローンの金利負担を減らすために作られた制度です。
要件を満たすと一定の期間、住宅ローンの年末残高を基に計算した金額を所得税額から控除されることから、住宅ローン減税とも呼ばれています。
所得から引かれる配偶者控除・医療費控除などの所得税控除とは異なり、所得に応じて支払った所得税から還付され、控除しきれなかった分は住民税からも控除されるというお得な制度です。
住宅ローン控除の内容は、以下の通りです。
- 年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価の少ない方の金額が対象となる
- 上記の少ない方の金額の1%について、40万を限度に所得税から控除(中古を除く)
- 受けられる期間は10年間(現在のところ2021年12月31日まで)
現在は特例として適用期間が13年間となっています。
拡充措置について詳しく見ていきましょう。
(1)2020年中に取得すると住宅ローン控除が受けられる年数は13年
消費税率が2019年10月に10%へ引き上げられたことにより、住宅ローン控除が13年間に拡充されています。
3年間延長されたことによって、引き上げられた消費税2%分にあたる金額が還元される計算になります。
居住開始 |
2019年10月1日~ |
2021年1月1日~ |
控除期間 | 13年間 | 10年間 |
控除率 | 1% | 1% |
大切なのは、居住の開始時期です。
住宅ローン控除を受けるための条件のひとつに期限内に「居住の用に供する」とあるので「実際に住んでいる」ことが必要です。
実際に住んでいるかどうかは住民票によって確認されるので、2020年12月31日までに住民票を移していなければ、控除期間は13年間ではなく10年間になるので注意が必要です。
すでに完成済の建売住宅やマンションでも、入居するまでには売買契約や住宅ローンの審査などの手続きに1~2か月かかるので実際に入居するまでには時間がかかります。
注文住宅を建てる場合には土地を購入済みで建物プランが決まっていたとしても、着工から受け渡しまで半年近くはかかるでしょう。
2020年12月31日年末までに居住を開始し、住民票も移せるよう逆算して、住宅取得までのスケジュールを立てましょう。
(2)新型コロナウイルスの影響で入居が遅れる場合は期限が延長
新型コロナウイルスの影響で入居が遅れる場合でも、条件を満たせば2021年12月31日までに入居することでによって控除期間13年間の特例措置の対象になります。
控除期間13年間の特例措置の期限が延長される条件として、以下2点を両方満たすことが必要です。
- 一定の期日までに契約すること
- 入居が遅れた理由が新型コロナウイルス感染症や、感染拡大防止のための措置の影響であること
取得方法 | 契約期日 |
注文住宅を新築 | 2020年9月末 |
分譲住宅・既存住宅を購入、増改築 | 2020年11月末 |
・https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html
2,住宅ローン控除(減税)の対象となる条件
住宅ローン控除の対象となる条件は以下のとおりです。
(1)対象条件
入居時期 | 取得後6か月以内に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいる |
その年の所得合計 | 3,000万円以下 |
住宅の要件 | 床面積(登記簿面積)50m2以上 |
ローンの償還期間 | 10年以上 |
中古住宅 | 現行の耐震基準に適合している |
増改築 | 工事費が100万円以上 |
3,住宅ローン控除(減税)はいくら戻ってくる?計算方法を解説
住宅ローン控除は、40万円を限度に、10年間毎年の住宅ローン残高の1%が支払った所得税から還付されます。
拡充措置に該当する場合はさらに3年間還付されます。
例えば、住宅ローンの年末残高が「5,000万円」の場合で考えてみましょう。
- 5,000万円×1%=50万円
限度額40万円と比べ少ない方が控除されるので、最高控除額は40万円です。
また、住宅ローンの年末残高が「3,000万円」の場合の最高控除額は以下の通りです。
- 3,000万円×1%=30万円
限度額40万円と比べ少ない方が控除されるので、最高控除額は30万円になります。
(1)所得税から控除しきれない場合は住民税が安くなる
住宅ローン控除が所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税が安くなります。
支払った所得税よりも、控除額が多かったために還付しきれなかった分が住民税から税額控除されるからです。
2009年度税制改正で、中低所得者層への実質的な負担軽減のため、新たな個人住民税における住宅ローン控除が受けられるようになりました。(2021年12月31日までの措置です。)
●個人住民税の住宅ローン控除額の計算方法
(所得税の住宅ローン控除)ー(支払った所得税)=個人住民税の住宅ローン控除額「①」
ただし、新築と中古の場合で限度額が異なるので注意しましょう。
●新築の場合:
新築の場合は、「①」が「前年分の所得税の課税総所得金額等の7%(136,500円を限度)②」を超えたら「②」が控除額となります。
●中古の場合:
中古の場合は、「①」が「前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(97,500円を限度)②」を超えたら「②」が控除額です。
中古住宅の場合、そのほとんどは個人が売主になるため、消費税がかかりません。
新築住宅に適用される限度額136,500円は、消費税増税分として拡充されているのです。
そのため、消費税がかからない個人が売主の中古住宅の場合は、拡充された制度が適用されず、従来の限度額97,500円となることを知っておきましょう。
(2)住宅ローン控除をシミュレーション
住宅ローン控除について例を挙げて「すまい給付金シミュレーション(国土交通省)」に基づき、計算すると以下のようになります。
●シミュレーション1
・家族構成 :夫・妻(専業主婦)・子(5歳)
・年収 :以下の表のとおり(夫)
・土地価格 :住宅価格の50%
・借入額 :住宅価格全額
・ボーナス払い:無し
・金利 :1.3%(固定)
・返済 :35年(元利均等)
・入居時期 :令和3年1月、()内は令和2年12月
・返済開始月 :各入居時期の1か月後
(単位:円)
年収 |
住宅価格 |
|||
2,000万 |
3,000万 |
4,000万 |
5000万 |
|
400万 |
1,708,300 (1,905,700) |
1,800,000 (2,100,000) |
1,800,000 (2,199,900) |
1,800,000 (2,299,800) |
500万 |
1,743,600 (1,939,400) |
2,512,100 (2,808,900) |
2,590,000 (2,989,900) |
2,590,000 (3,089,800) |
600万 |
1,743,600 (1,939,400) |
2,615,700 (2,909,600) |
3,246,700 (3,644,200) |
3,290,000 (3,789,800) |
700万 |
1,743,600 (1,939,400) |
2,615,700 (2,909,600) |
3,487,600 (3,879,700) |
3,973,800 (4,471,500) |
800万 |
1,743,600 (1,939,400) |
2,615,700 (2,909,600) |
3,487,600 (3,879,700) |
3,973,800 (4,471,500) |
900万 |
1,743,600 (1,939,400) |
2,615,700 (2,909,600) |
3,487,600 (3,879,700) |
3,973,800 (4,471,500) |
1000万 |
1,743,600 (1,939,400) |
2,615,700 (2,909,600) |
3,487,600 (3,879,700) |
3,973,800 (4,471,500) |
拡充適用時減税額 |
+約20万円 |
+約30万円 |
+約40万円 |
+約50万円 |
住宅ローンの年末残高と支払った所得税を基準に計算されることから、以下の条件を満たすと還元される金額もより大きくなります。
- 住宅価格が高い
- 年収が高い=支払った所得税が高い
ただし、融資を受けられても健全な返済比率なのかどうかを精査する必要があります。
平均値とされる年収の30%を超えて返済に充ててしまうと生活にゆとりがなくなってしまう場合があるからです。
返済比率は銀行や年収によって、20〜40%と大きく開きがあります。
返済比率内だからといって現在の生活を大きく変えてしまうことのないようにローン返済金額については考慮しましょう。
4,手続きと必要書類について
住宅ローン控除を受けるための手続きは最初の年と2年目以降とで異なります。
実際の手続きや、必要書類を確認しましょう。
(1)住宅ローン控除を受けるための手続き
給与所得者である会社員の場合、住宅ローン控除を受けるための手続きとして、最初の年は確定申告を行わなければなりませんが、2年目以降は年末調整で控除されるので手間がかかりません。
|
手続き方法 |
最初の年 |
税務署へ持参・郵送、 |
2年目以降 |
年末調整 |
(2)住宅ローン控除を受けるための必要書類
住宅ローン控除を受けるための必要書類も、最初の年と2年目以降で異なります。
最初の年に必要な書類は以下の通りです。
1,初年度に必要な書類一覧(会社員・新築住宅の場合)
必要書類 |
入手先 |
確定申告書A |
税務署で配布 |
(特定増改築等) |
|
住宅ローンの年末残高等証明書 |
住宅ローンの借入をしている金融機関から発送(11月頃) |
建物・土地の登記事項証明書 |
全国の法務局で取得 登記後に不動産会社や司法書士から |
建物・土地の売買契約書の写し |
不動産会社から渡される |
本人確認書類の写し(1、2どちらか) 1,マイナンバーカード 2,通知カードまたは住民票 |
市区町村の交付窓口 ※自宅からe-Taxで送信すれば |
必要書類にも変化があり、以前必要だった住民票はマイナンバーカードがあれば必要なく、自宅からe-Taxで送信すれば写しの提出も必要ありません。
また、給与所得の源泉徴収票も提出の必要がなくなりました。
ただし、確定申告書を作成する際には必要になるので税務署で直接入力する方は忘れずに持参しましょう。
(3)確定申告に必要な書類の書き方
確定申告に必要な書類の書き方を、会社員の場合を例に見ていきましょう。
会社員の場合、確定申告に必要な書類で記入が必要なのは、以下の2点です。
- 確定申告書A
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
記入する際には、以下の3点を用意するとスムーズです。
- 源泉徴収票
- 売買契約書
- 住宅ローンの残高証明書
記入しやすさを考慮し「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」から記入例を掲載しています。
WEB上で入力する際も、書き方を参考に入力してください。

画像引用:https://www.flat35.com/files/300330328.pdf

画像引用:https://www.flat35.com/files/300330329.pdf

画像引用:https://www.flat35.com/files/300330330.pdf
5,確定申告はいつまでにするのがよい?
2020年に住宅を購入した場合の確定(還付)申告の期間は、2021年1月〜3月15日(月)の予定です。
現在、新型コロナウィルスの影響で確定申告の期間が期限以降でも対応してもらえると国税庁のホームページでも発表されていますので、以下をご覧いただき、更に詳しくは各市町村の税務署等までお問い合わせしてください。
当初発表の期間は、4月16日(木)まで延長が発表されましたが、それ以降でも柔軟に対応してもらえるとのことです。
ただし、毎年確定申告を行う自営業の方は、一般申告と合わせ確定申告期間の2021年2月16日(火)〜3月15日(月)(予定)に行います。
還付申請の場合は、住宅を購入した翌年の1月から5年間であれば申請を受け付けています。
還付申請を忘れてしまった場合でも、5年間の期間内に手続きをすれば大丈夫です。
過去に遡って申請する場合は、必要書類に変更がないかを事前に問い合わせて、不備がないように準備しましょう。
6,住宅ローン控除(減税)制度の注意点について
住宅ローン控除制度の注意点として主なものには以下の3点があります。
- 会社員の場合、2年目以降は年末調整で申請する
- 中古住宅の場合は住宅ローン控除の限度額が20万円になる
- 夫婦で持ち分を分けた方が控除額が大きい場合もある
(1)会社員の場合、2年目以降は年末調整で申請する
会社員の場合、2年目以降は住宅ローン控除を年末調整で申請することができます。
申請のための書類として以下の2点が必要です。
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 住宅ローンの年末残高等証明書
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書は、1年目の確定申告をした年の10月頃に税務署から10年または13年分がまとめて送られてきます。
毎年の年末調整に使用するので保管しておきましょう。
住宅ローンの年末残高等証明書は、1年目と同じようにローンを組んでいる金融機関から11月頃送られてきます。
(2)中古住宅の場合は住宅ローン控除の限度額が20万円になる
中古住宅の場合は住宅ローン控除の限度額が20万円になります。
中古住宅の場合はほとんどの売主が個人のため、消費税がかからないためです。
住民税と同様に、消費税がかからないことから特例が受けられず、控除の限度額が20万円となることを知っておきましょう。
(3)夫婦で持ち分を分けた方が控除額が大きい場合もある
夫婦で持ち分を分けたほうが控除額が大きくなる場合があります。
夫婦それぞれの所得税から限度額いっぱいまで控除できるため、控除の限度額が1人40万円から2人で80万円になります。
例えば控除額50万円の場合、持分に応じて還付金は以下のようになります。
- (夫のみ)限度額の40万円だけ還付される
- (夫婦)限度額がそれぞれ40万円となるので、夫婦合わせて50万円還付される
また、中古住宅を購入した場合には、夫婦で所有することによって限度額が新築時と同じ40万円になります。
住宅ローン控除の限度額が1人あたり20万円のため、2人で所有すると倍になるからです。
一方で、住宅購入にかかる諸費用も全て2倍になるので、全体の控除額と諸費用を計算し、比較することが大切です。
また、フラット35以外の住宅ローンを組む際に必須となる団体信用生命保険は、そのまま生命保険代わりになりますが、夫に万一のことがあったとき住宅が夫婦の共有になっていると、夫のローン部分のみが支払い免除の対象になるため、注意しましょう。
7,まとめ
今回は、以下の点についてご紹介しました。
- 【最新版】住宅ローン控除(減税)の制度
- 住宅ローン控除(減税)の対象となる条件
- 住宅ローン控除(減税)の計算方法
- 住宅ローン控除(減税)を受けるための手続きと必要書類
- 住宅ローン控除(還付)の確定申告は購入した翌年の1月から3月15日
- 住宅ローン控除(減税)制度の注意点
控除額の大きさは、住宅ローンの借入額と年収によって変わるため、一般的に収入が低いとされる若いうちは、あまり恩恵を感じられないかもしれません。
だからこそ、2020年に適用されている拡充措置を利用して、13年間の控除を受けることをおすすめします。
収入が上がってくると考えられる8〜13年目までの控除額が大きくなるので、住宅取得には大きなメリットと言えるでしょう。
ぜひ、選択肢のひとつとしてシミュレーションしてみてください。
8,【関連】住宅ローンの節約に関するお役立ち情報
今回の記事では、「住宅ローンの控除(減税)制度」について、その条件や計算方法などわかりやすく解説いたしました。
住宅ローンに関する節約情報は他にもありますので、以下あわせてご覧下さい。
・「住宅ローンの金利」プラン・推移・動向などわかりやすく解説【初心者向け】
・【2020年版】住宅ローン(固定・変動・フラット35)金利比較「低金利ランキング」
記事公開日:2020年06月06日
記事作成者:希野 通貴